schedule2020-08-28

象牙を巡るドキュメンタリー「THE AIVORY GAME」の感想

THE IVORY GAME アイボリー・ゲーム

象牙の密猟を追ったドキュメンタリーを観たので感想を書きます。 数年は取材をしており充実した内容で見ごたえがあります。

ドキュメンタリー内で知ったこともまとめておきました。 画像は全てTHE AIVORY GAMEのキャプチャです。

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簡単なあらすじと感想

アイボリーゲームは象牙をめぐる密猟との戦いを追ったNetflixオリジナルのドキュメンタリー映画。 アフリカではゾウが密猟され、中国では高値で取引される最高級品象牙が密輸されている。 「15分に1頭のゾウが殺される」という現状に立ち向かう人々を描いた作品。

取材はアフリカゾウの生息地(ケニア、タンザニアなど)から中国やベトナムにまたがり、潜入捜査から密猟者の摘発の様子や活動家と政府の動きを追った濃い内容となっている。 密売現場の潜入捜査と摘発の様子はかなり緊迫感があります。 一度隠しカメラが見つかってしまうことも。

一応注意点として。殺された象の死骸が映ります。それもたくさん。 山積みの象牙も。 生きている象の様子と対比して、本当に悲しくなっていきます。 そして、死骸以上に人間の醜いところも映されます。

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ケニアで摘発された象牙の山。データベースに登録後、105トンが焼かれた。

密猟を行う理由

密猟が絶えない大きな要因は中国に"合法"の象牙市場があることです。 政府が許可した年間5トンの取引では需要に応えられず、違法な商品も売買されます。 合法の売買に混ぜてしまえば良いため、違法な象牙も簡単に売られてしまう。 違法な象牙の取引は年間数百トンにものぼります。 そのため、取引を全面禁止にする必要があり活動を行っている。

そして何故、絶滅するほど象を殺すのか。 象を殺し個体が減ると在庫の象牙の価値が上がります。 価値が上がると密猟者が増え個体が減る悪循環に陥っている。 実際、数年で象牙の価値が2割上がっているらしい。

市場が大きく象牙に価値があるため、密売によって政府高官や軍人なども利益を得ている。 金やダイヤと同じく象牙を高級資源として見ている。 象の数が減るほど価値が上がる割の良い投機対象として。

1979年には130万頭いたアフリカゾウは、2016年には40万頭まで減った。 「今も15分に1頭のゾウが殺されている」

中国は2017年12月31日をもって象牙の市場を閉鎖しました。 中国が象牙市場を閉鎖 アフリカゾウの密猟を止める最大の転機 - WWF

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中国で売買される象牙。1本30万ドル以上する商品もある。

ネームド象

大きな象牙を持つアフリカ象には名前が付けられている。 このドキュメンタリーではワントン、ティム、サタオがでてくる。 ワントンの象牙は長さ約2mで重さは左右で70~80kgはある。 世界でも20番以内の大きさは映像で見るだけでも強い存在感がある。

大きな牙は高値が付くため密猟者からも狙われる。 サタオはケニアでもっとも有名な象だが、残念ながら密猟者の手にかかって殺されてしまった。ナショジオ

アフリカゾウはなぜかバニラの匂いが好きだという。 道路を横断するためのトンネルにバニラを塗ったら、象たちはそこを通るようになったらしい。

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アフリカゾウのワントン(重さ1トンの意)。

Wilde Leaks

ドキュメンタリーで出てくる告発サイト。 The Earth Leagueが作成、資金提供、管理する非営利の共同プロジェクト。 サイトWilde LeaksにはTor経由で告発する情報が送られてくる様子もありました。

日本での象牙の取引は?

1989年にワシントン条約で象牙の商業取引を禁止している。 しかしそれ以前に6,000トン以上を輸入しており、現在も多くの在庫を抱えている。 輸出入は禁止だが国内での取引は合法です。 そのため、中国市場への流入源にもなっていた。

参考: 日本の象牙の国内市場と「決議10.10」- WWF